東京高等裁判所 昭和56年(う)1218号 決定
被告人 杉高夫
〔抄 録〕
本件控訴申立の適法性について検討すると、記録によれば、被告人は前記被告事件について昭和五六年六月二三日原裁判所において有罪の判決の宣告を受けたものであるところ、これに対し被告人本人又は原審判決宣告当時の弁護人から控訴の申立はなく、被告人の妻杉アキ子が右判決宣告日付東京高等裁判所宛の弁護人選任届により弁護士丸物彰を弁護人として選任した旨を同弁護士と連署のうえ原裁判所に届け出るとともに同日同弁護人から本件控訴の申立がなされたことが明らかである。しかしながら、第一審判決後に被告人の妻が選任した弁護人は、被告人のために控訴の申立をなす権限を有しないものと解すべきである(最高裁判所第一小法廷昭和四四年九月四日決定、刑集二三巻九号一〇八五頁、同第三小法廷昭和五四年一〇月一九日決定、刑集三三巻六号六五一頁参照)から、本件弁護人による控訴の申立は権限を有しない者がなした明らかに法令の方式に違反する不適法なものといわなければならない。
(千葉 香城 植村)